土からはじまる 深遠なる世界 ブランドストーリー
brand story 土と健康のはなし
汚れているのは土だった
「農業」というとクリーンなイメージを持たれている方が多いですが、実は大地や水をダイレクトに汚染しやすい産業の一つだということをご存知ですか?
農薬や除草剤については言わずもがな、意外と知られていないのは、人が与える「肥料」がその汚染源になっているということです。作物や微生物が処理しきれない肥料分は土に残留し、それを吸い上げた作物が昆虫による食害にあったり、地下水を通じて川や湖、そして最終的には海へと流れつき、大量のアオコ・赤潮が発生する原因になることもあります。
こうした作物を食害する昆虫やアオコ・赤潮たちは、人から見れば「悪者」かもしれません。しかし、不要なところを取り去ってくれる「お掃除役」であるという視点を持ったとき、自然界のシステムがいかに偉大か、気づかされることになります。
土を汚すことなく、土の力を最大限に引き出して栽培ができれば、「環境にも人にも優しい100年続けられる農業」を実現できるのではと考え、2013年から独自の手法で土壌微生物の研究を続けてきました。
微生物の土づくり
土が作物を育む力のことを「地力」と言うのですが、今から10年ほど前に、土や地力に関する文献を読み漁ってみても、学術的にまだわからないことの方が多く、まさに『ブラックボックス』状態でした。ただ、微生物が地力に関係しているだろうことは直感でわかっていました。その仮説のもと、最初はシャーレの中で個別の微生物の純粋培養からスタートして、各々の微生物の特徴を探るべく実験を繰り返しました。その後は、自然界の土と同じ「常温・無殺菌」の環境下で、複数の微生物の培養をコントロールする研究へとシフトして行きました。
「人が野菜を育てる」という発想から、「野菜が自ずと育つ土を、人が育てる」発想への転換が、持続可能な農業のカギを握っているように思います。
3年後のカラダをデザインする
このように、微生物の土づくりからこだわって農業を始めたきっかけは「持続可能な地球保全」のためでしたが、実はもう一つ目的がありました。
それは、「人が食べもので健康になること」です。
至極当たり前のことと思われるかもしれませんが、生活習慣の乱れや日々のストレスから、私たちは意外と簡単に体調を崩してしまいます。病名がわからないけれど、「なんとなく体調が優れない」という症状も、病気になる一歩手前の状態といえます。
東洋医学の考えでは、このような状態を「未病」とよび、未病のうちから体を整えることが基本指針となっています。
病気になってしまったら鍼灸や漢方薬(生薬のミックス)によって治療する必要がありますが、未病のうちは食材(野菜やくだもの)を使ってカラダを整えられないだろうか、と考えました。
食材は生薬ほどの作用はないものの、穏やかな作用を示すものがほとんどなので、野菜の調合次第では、食べものでありながら、漢方薬よりも軽めのお薬としてもふるまいます。これは、まさしく「医食同源」という言葉の実践につながっていくものです。
[この記事を書いた人]
- 永田 和史 Kazufumi Nagata
- 静岡県出身。会社員時代に同期の実家(沖縄県石垣島)を訪れた際、サンゴ礁の白化現象を目の当たりにし、地球環境の異変に危機感を覚える。 その後、地球環境問題を他人事ではなく、カラダの健康とダイレクトにつながり自分事として認識するきっかけになりうる「食」と「農」の分野に着目。持続可能で健康的な「食」×「農」の形を追究するべく、2013年から土壌微生物の研究を開始。「肥料も農薬も使わず、元気な野菜をつくるためにはどのような土の状態になっていればよいのか」を明らかにするための研究を粛々と続ける。 7年間の研究を経て2021年、野菜を使用した加工品の製造販売を行う里山野菜株式会社を設立、代表取締役に就任。