里山野菜

アグリウム誕生秘話 屋久島・白谷雲水峡の、「霧」と「光」に魅せられて…

以前、屋久島の原生林の奥地にある白谷雲水峡を旅したときのこと。森の中にはうっすらと霧がたち、そこにやさしい木漏れ日が差しこむ美しい景色に心を奪われました。この霧と光のハーモニーはとても幻想的で、思わず我を忘れてしばらく見入ってしまったほど。アグリウムの「霧」と「光」の演出は、この屋久島での体験がきっかけとなり誕生したものです。

アグリウム誕生までのエピソード ① 一人旅と研究の日々

当時会社勤めだった頃は、長期連休を活用して、全国津々浦々、山に登ったり海に潜ったり、旅をしながらありのままの自然に触れるのが楽しみの一つでした。屋久島をはじめ、日本中の森や川、海、湖などを旅しながら、その環境を俯瞰して眺めていくと、ある時、面白い現象に気がつきます。それは、山の資源が海に流れ、海の資源は山に戻る。具体的には、水の循環をはじめ、元素の循環、生物個体の循環(いきものの命の循環)など、あらゆる循環により、山と海(または湖)両者が相互に影響を与えあっているという事実でした。

学問の上では、森林学・土壌学・地質学・海洋学など別々の分野に切り分けられて専門的な研究が進められています。しかし、その相互作用を研究している学問が乏しかったことから、私は全体を俯瞰する視点に興味を持ちました。これはデザイン事務所として独立した後の、2013年頃の話です。

このころ、資源が循環すれば人が手間をかけなくても完結するシステムが実現できるだろうという仮説のもと、「清掃が要らないアクアテラリウム」の実現を目指して試作をおこなった、という裏話があります。

アグリウム誕生までのエピソード ② 食を通じて、直接人の役に立ちたい

資源は循環しながら、あらゆる生き物の糧になって命をつないでいます。全てのいきものにとって大切な食という行為に焦点をあてて、もっと直接的に身近な人の役に立ちたいと考えるようになっていきました。こうして始まったのが、現在里山野菜が研究を続けている、微生物によるオーガニック作物の安定栽培です。事業領域を「農」と「食」に特化したことから、当時、別軸で開発を進めていたインテリアのコンセプトは「食べられる景色」となり、「農業」を意味する[Agriculture]と、流木やコケを観賞して楽しむテラリウム[Terrarium]の造語として、アグリウム[Agrium]というネーミングが誕生したというわけです。ちなみに、当初このアグリウムを通じて、「食育の実践」と「クリエイティビティの創出」の2つを皆様に提案できればと考えていました。

コンセプトの決定後、スプラウト(新芽野菜)・ハーブ・野菜などあらゆる材料を使った「食べられる景色」の再現に向け、試作と検証を繰り返しました。

アグリウム誕生までのエピソード ③ 「水」と「光」を一体化するアイディア

当初、アグリウムは太陽光の下で栽培容器で育てるイメージを想定していました。しかし、設置場所が窓辺に限られてしまうことや、毎朝水を与え続けなければならないこと、直射日光でコケなどの装飾植物がしおれて枯れてしまうことなど、あらゆる課題が開発の壁として立ちはだかります。これをどうすれば解決できるか考え続けた結果、自然界の森をヒントに、霧によって水を供給したらどうかというアイディアを思いつきます。霧を逃さないように、ドーム型の空間に霧を充満させるべく、水槽の中に景色を作り込み、上に装置を乗せるという発想です。しかし、装置を乗せると装置が影になってしまい、太陽光が遮られてしまう。それならば光も一緒に再現してみよう。こうして開発が始まったのが「レインボースカイ照明システム」です。この照明システムにより、アグリウムは窓辺のみならずあらゆるスペースに設置できる強みを獲得しました。

こうして再現したアグリウムの試作品を、2016年8月に東京ビッグサイトで開催されたTokyo Maker Faireに出展したところ、多方面の方々から商品化のご要望をいただき、アグリウムプロジェクトがスタートすることになりました。

アグリウム誕生までのエピソード ④ クリエイティブ会員を公募し、会員のみなさまと一緒にブラッシュアップをスタート

その後、水槽をシリンダー(円筒)型にしたり、本体を鏡面ステンレスにするなど、デザイン面と機能面におけるさらなるブラッシュアップを経て、クラウドファンディングサイト「Makuake」にてアグリウムのクリエイティブ会員を公募し、35名の方がアグリウムプロジェクトを支援してくださり、ついに商品化が実現しました。

開発と改善に関わってくださった方々の一部を以下に記載します。(掲載確認が取れたクリエイティブ会員の方のニックネームを、順不同で掲載)

  • Ishiwata Toshiki
  • Kohei Kawauchi
  • kazuaki Shiraishi
  • Hidewo Kusano
  • Ushi Tone
  • Masafumi Kajino
  • Fuyuko Suzuki
  • Noriko Murahana
  • Yoko Yamashita
  • lamda
  • Yuko Hanai
  • Syu Tokunaga
  • 373world
  • 123nagata

こちらに、野菜水槽Agriumのスタートアップにご協力くださったクリエイティブ会員様のお名前を記載させていただきます。(個別にご確認が取れ次第、近日公開予定)