紫舌・灰腐苔 しぜつ・かいふたい
紫舌・灰腐苔(しぜつ・かいふたい)は体の芯から冷えて血行が悪くなると同時に、余分な水分や老廃物が停滞しているときに現れる舌象のこと。
解説
舌が紫色を帯びていることは、内側から体を温める力が弱るか、外部から強い寒さを受けたことにより、体が芯から冷えて血液や体液の流れが滞り、舌を血液と水分で満たせていないために起こります。紫舌は、赤みの少ない淡白舌よりもさらに寒さの度合いが強くなり、症状も重篤です。また、苔の下の舌色が見えないくらいに厚くネバネバと貼りついた灰色を帯びた苔の中でも豆腐カスのような剥がれやすい苔は、体内に余分な水分や熱・老廃物が停滞していることを示しています。病気が長引いた結果、正気(体力)が弱まり免疫力が低下した状態でも見られます。消化機能の低下、一過性の食べ過ぎなどにより胃腸に負担がかかっている可能性が高いです。
弁証
舌表面の過剰な濡れ「寒湿凝滞」
「舌表面の濡れ」が顕著な場合、体の代謝機能で処理しきれない水分が、体内にあふれていることを疑います。これは寒湿凝滞の兆候です。主な症状として、「寒気」「むくみ」「体が重い」「水っぽい鼻水」「下痢・軟便」などが挙げられます。
舌の乾燥・亀裂や紅点「湿熱食積」
舌象に「亀裂(裂紋)」や「紅点(赤み)」が見られたり、舌が乾燥していたりする場合、体内に停滞した余分な水分・老廃物が熱をもっていることを示しています。これらは湿熱食積のサインとなります。
なお、中央にうっすらと縦の切れ目が見えるのは正常で、裂紋ではありません。舌が乾燥することによって舌が慢性的に水分を失い、深い亀裂が生まれたものを裂紋とみなします。
また、「紅点(赤み)」が見られる場合、その紅点が現れる位置で熱を持った箇所を特定することができます。「舌尖(舌の先)」にある場合は「心」が熱を持っていることを示し、「舌辺(舌のフチ)」なら「肝」、「舌の中央部」なら「脾」に熱がこもっているとみます。
湿熱食積がある場合の主な症状として、「手足のほてり」「喉が渇く」などが挙げられます。
紫色の斑点やシミ「血瘀」
舌象に「紫色の斑点やシミ」が見られる場合、血液の巡りが悪くなって体の一部に滞っている可能性があります。また、血瘀の別の診断方法として、舌の裏側の血管が青紫色に膨らんで蛇行している場合などもこれに当てはまります。
血瘀の主な症状として、「肩こり」「頭痛」「関節の痛み」などが挙げられます。
中医学的な説明
紫痩舌は陽虚寒凝により血瘀と津液不足を起こしていることを示す。また、灰腐苔は痰濁内停・寒湿凝滞(内阻)を示す。灰苔は舌質乾燥なら熱盛傷津、舌質湿潤なら寒湿凝滞(内阻)を示す。
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